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大人の作文ハッシュ班の想い出 ハカセ 今年もキララの夏の学校の季節がやってきました。暑い名古屋を逃げ出して、いざ白州へと到着してみると、小学校高学年の女子の班を受け持つことになったとのことでした。昨年の小学校4〜5年生の班のことを思い出しながら名簿を見ると、MとMの2人が、1年後にまた来てくれていました。これで常連となった彼女たちは、昨年から虫が多いこと、蚕部屋のトイレが外にあって汲み取りであることなどで散々文句を言っていましたが、結局は白州のファンになってしまったようです。M、Y、Rの3人が新しく参加した子どもでした。この比率がちょうど良かったこともあって5人はすぐ仲良くなり、楽しい雰囲気の班になりました。 初日の夜、自己紹介のあとで、さっそく班の名前を決めました。白州郷牧場スタッフのおっちゃんと私の2人が班リーダーになりましたので、彼女たちは「ハッシュ班」という名前をつけてくれました。ハは「はかせ」のハで、これは私の昨年からの通称です(昨年のことなのでよく覚えていませんが、強制したわけではありません。誘導はしたかもしれません)。シュはおっちゃんの名前「シュンイチ」からとりました。いい子たちを受け持ったねぇ、とほかの班のリーダーにもうらやましがられるこの名前。とても順調な滑り出しでした。 今年の夏の学校は、事前の毎月の定例会で話し合った結果、班リーダーが班の子と可能な限り、起居を含めた生活全般をともにすることと、プログラムを減らして余裕を持たせ、班作りに時間を割けるようにすることが決まりました。都会とは質的に異なる白州郷牧場での生活を、子ども自らが作り上げてゆくことを大事にしようという考え方でしたが、これがうまくいって、子どもたちが生活に慣れる時間が早くなったように思いました。白州での生活に慣れると、余裕ができていろんなことを楽しめるようになります。たとえば、朝と夜は大人に頼らず、班で相談してリーダーと一緒に作る、ということになった食事の支度ですが、最初は火を使う仕事は全部私がやっていました。ところが日がたつにつれて、次第に彼女たちもやりたがるようになりました。調理の経験はない子もいましたが、初めての子がうまくできたときはとてもうれしそうでした。小さい子のぶんも一緒に作っていたので、作ったおかずが美味しかったときには尊敬をこめた評価をもらえます。どの子も家では食事作りはしていないそうですが、炒め物などの基本的な調理についてはなかなかの腕前を発揮しました。もしかすると彼女たちは、弟や妹がたくさんできたように思っていたのかもしれません。 生活をつくることと併せて、牧場のフィールドを活用した農業の経験を大事にしようという方針も、今年改めて確認していました。そこで毎日農作業の時間を取り、体験だけではなくある程度の作業量をこなすことを前提として、午前中の2時間ほどと、夕方の1時間ほどは畑に入りました。作業の内容は主として夏野菜の収穫でしたが、これも慣れるにつれて能率が上がっていき、収穫できる野菜の見落としも少なくなってきました。こうなると作業も結構楽しくなり、野菜の大きさ比べ、長さ比べ、変なかたちの比較など、いろいろなコンテストが行われるようになりました。例によって虫を見つけると黄色い声を上げて大騒ぎをしていましたが、これも徐々に慣れ、声は上げるものの収穫の手は止まらないようになりました。 生活づくり、農業の経験とともにキララの学校の目標としてきた、自然を感じる経験については、標高2300mの瑞垣山への登山が良い経験になったと思います。登山口からの標高差が約600m、子どもの足で3時間ほどかかる、日帰りとしてはわりと本格的な山でした。子どもたちは歩き始めの登りはすぐ休みたがりましたが、体が慣れてくるにつれて表情が良くなり、足どりもしっかりしてきました。詳しくは彼女たちの感想にゆずりますが、これも全員が初めての経験で、山頂からの眺めがすばらしかったこともあって印象に残ったようです。今年は小学校5年以上が登山に参加しましたが、その範囲内では学年による体力の差はあまりなく、むしろ若い方が元気だったかもしれません。ハッシュ班の子どもたちは、帰りの車の中でキララの学校の大人たちをテーマにした替え歌作りに熱中して、一曲完成するごとにコーラスを繰り返していました。眠たげな中学生のお姉さん方はうるさそうにしていましたが、それを意に介する様子もなく、5曲以上を作り上げて、最終日のキララ祭りのとき、キャンプファイヤーをかこむ輪の中で披露をしていました。 このほかの想い出も含め、今年のハッシュのみんなと過ごした夏の学校の時間は、いつにもまして楽しかった、というのが私の回想です。一週間の子どもとの生活には、体力的なことを中心として疲れることも多いのですが、楽しさをもらうことがそれにも増して多く、やはりまた来たいなあ、と思って白州から帰ってきています。彼女たちもそうあってくれると良いのですが、さて来年は誰がまた来るのでしょうか。そして、来年は今年よりも少し成長した姿を見せてくれるのでしょうか。この変化も楽しみです。 |
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